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水害対策住宅の研究

Foggy Forest

​​世界的な異常災害

✩世界的に「地盤沈下」や「海面上昇」で沿岸部が高波に襲われています。

又内陸においても「異常気象」で洪水や土砂崩れが頻発しています。

現状では早めの避難を促すしかありませんが、新たな考えで対応することが求められています。

✩比較的進んでいると言われるわが国においても、治水インフラ整備は災害に追いつかない状況です。

そのような危険地には住まないのが一番ですが、狭い国土ですからそうもいきません。

これからは公共の治水だけに頼らない、私たち住む側からでもできる対策を考える必要があります。

✩しかしながらこれらの方法も川や崖直近ではその激しさに抗しきれなく、近ずき過ぎないことが何より重要です。

水害対策住宅の必要性

☆毎年繰り返される自然災害に対して安心できる住まいが必要とされています。

国の主導により地震や火災などへの対策はかなり進んでいますが、水害に対しては早めの避難を呼びかける他には有効な手立てがないのが現状です。

これは対策の難しさも有りますが、一方で水害はごく一部の低地での出来事という認識にもよると思います。

しかし日本の人口の1/3は浸水エリア内に居住…と増加しています。

避難所は全員収容できませんし、お子さんや高齢者・障害者さんなどには厳しい状況です。

ある災害での調査によると避難率は40%だったそうです。

✩今後は住み慣れた自宅の2階以上への垂直避難が可能な、水害対策住宅が必要とされています。

一旦被災しますと生活基盤は破壊され、復旧作業は数か月に及びます。

治水の発達により危機感が薄くなり、実際に被災した人のみがその恐怖を感じているのが現状と思います。

行政、研究機関及びハウスメーカーさんもその少ない需要に応える研究はようやく半歩を踏み出したばかりです。

当HPが今すぐ対策を必要とされる方の一つの参考になれば幸いです。

​​居住地域での3通りの解決策

①根本的解決には地域全体の地盤嵩上げが一番です。
②次善の策として、水害対策用の共同住宅があります。
③個人住宅としては国交省により、4通りのパターンが提示されています。

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​​「①地域全体の地盤嵩上げ☆☆☆☆☆」

氾濫時の想定水面より高く盛土します。
将来的に一番安定した方法です。

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​​「②水害対策用の共同住宅☆☆☆☆」

・住み慣れた土地で生活継続。
・一定のコミュニティ維持可能。
・住民減なしで自治体の税収維持。
・バリアフリーが確保できる。

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​​「③個人住宅でできる4つの方法☆☆☆」

国土交通省のガイドラインです。
「盛り土(個人毎)」「高床」「塀で囲む」「建物防水」があります。

​​個人住宅でできる対策

上記③の「敷地盛土」「1階高床」「塀で囲む」「建物で防ぐ」の方法の内、当HPでは「建物で防ぐ」方法に限定して浸水対策住宅を考えています。

​「建物で防ぐ」の中でも、完全な浸水防止を目指す耐水害住宅と、浸水は容認するが早期復旧をめざす準耐水害住宅に分けています。

条件(立地・予算・浸水頻度・家族構成etc)により組み合わせのバリエーションは無限に考えられますが、ここではこんな方法があるとの提案に留めさせて頂きます。​

どの程度の性能を選択し組み合わせるかは建築主の総合的判断と言いますか覚悟次第になりますので、設計者・建築会社の三者で良く打ち合わせして方向性を決めて下さい。

​浸水深さによる考察

各自治体のハザードマップは最大値を表しています。

時々改定される点は困りますが一応の目安にはなります。

ここでは木造住宅を前提として考えるので、ほぼ1階が水没する3mを考え方の一つの分かれ目としました。

㋑3m未満⇒耐水害住宅又は準耐水害住宅とする。

㋺3~5m⇒RC造の中層共同住宅への建て替えの推進を図る。

㋩5m以上⇒居住不適地、移転推進か盛土。

​以下は㋑の3mまでの浸水に対しての考察と致します。

​​【現在の標準住宅】

住宅の地面から1階床までの高さは、標準的に0.5mが多いです。

この基礎の換気口の設け方は、従来は角型の換気口が主流でしたが、現在は基礎パッキン式が多くなっています。床下浸水の高さはこの基礎工法で違ってきます。

「基礎パッキン式」⇒最近多くなった基礎コンクリートと土台の間にパッキンを挟み、隙間を通気口とする工法です。コンクリート立ち上がり約0,3mまでは床下浸水は防げます。

​「換気口式」⇒従来から使われていた角型格子のものです。ほぼ即に床下浸水が起こります。

​​【耐水害住宅】

「建物内に浸水させない防御法です。」​

​​浸水高さに関係なく浸水を完全に防げば耐水害住宅になりますので、ハザードマップによる数値予測が非常に重要です。​

​RC壁により水を防ぎますので、打ち継ぎ面には止水板を打ち込みます。

ⓐ-1:「浸水0,3mまで」⇒現在の標準のパッキン式基礎工法で防げます。

ⓐ-2:「浸水0,5mまで」⇒床下に空間を作らないことによって、床下の復旧作業を不要にする基礎工法(推奨)。

ⓑ:「浸水0,3~1,0mまで」⇒高基礎とします。日常の不便さをいとわなければもっと高くも可能です。敷地の狭い都市部に適しますが、高さ制限等の法的緩和処置があると助かります。

Ⓒ:「浸水1,0~3,0mまで」⇒1階外壁周りはRC造です。開口部は耐水建具、浮力による浮き上がり防止や流失防止のため杭は必要になります。

✩1階排水口には逆流防止弁が必要です。外部の設備機器は冠水しない高さに設置します。

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​​「ⓐ-1:0,3mまで」

​​従来のパッキン式基礎工法でOKです。

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​​「ⓐ-2:0,5mまで」

床下に空間を作らないことによって、床下の復旧作業を不要にする基礎工法(推奨)。

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「ⓑ:浸水0,3~1,0mまで」

​​図のように浸水0,5mであれば床高は0,7mになります。

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​​「ⓑ:浸水0,3~1,0mまで」

​​図のように浸水1mなら床高は1,2mになります。バリアフリー上この辺が高基礎の限度でしょう。

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​​「Ⓒ・1m超~3mまで」

1階は浸水を完全に防ぐRC壁と耐水建具。浮力による浮き上がり防止の杭など、建築費は相応に必要です。

​​「ⓐ-2の基礎工法例」

​床下空間がないので、水は侵入しない。工費的には差はないそうです。

​​耐水性建具参考

現在住宅用に開発されたものはない。
住宅用に特化した使い易い製品の開発が待たれます。

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​​「耐水シャッター」​​

​​ビル用では3mの浸水に問題なく耐える製品がある。住宅用の簡便で低価格品があれば…。

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​​「耐水ドア」

​3mの浸水には問題なく耐える性能がある。​住宅用としてのデザイン・価格的な面での開発を望みます。

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​​「耐水サッシュⅠ」

​​船舶用丸窓は耐水性能が未知数。新たに​開発が待たれます。

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​​「耐水サッシュⅡ」

​一条工務店さん開発の工場取付の一体型サッシュ及び玄関ドアは、一定高の浸水には効果があるようです。

​​設備機器他参考

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​​「外部設備機器」

給湯器、エアコン屋外機などは浸水高さ以上にする。

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​​「逆流防止弁」

トイレ・流し等の内部水回り配管は逆流防止弁設置。

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​「サービスバルコニー」

​2階等の浸水の恐れのない位置に設備機器を設置するバルコニーがあると便利。

​【準耐水害住宅】

​「浸水前提・早期復旧を目指す!」

「浸水前提なので生活主空間は2階へ!ホームエレベーターの設置も!」

「一階は車庫・在宅ワーク室・アトリエ等比較的復旧し易い部屋にする

​「3階又屋根裏部屋には備蓄品スペースを!」

費用をかけない簡便な方法です。基本的に現在行われている住宅の建築工法を使用します。浸水が前提となりますので家財や内装は犠牲になります。

「ⓐ:0,5m迄(床下浸水)」⇒床下点検口+基礎内排水孔設置で汚泥排出

「ⓑ:軽微な床上浸水」⇒床下はⓐの方法。床上は↓

 ・浸水深さに応じた腰壁などで水平ゾーニング。

 ・床の水はけ良く、非吸水性の床材を継続使用。

 ・断熱材は非吸水性の硬質ウレタン吹付。

 ・内壁材は非吸水性で木軸の乾燥の為、取り外しやすく。

 ・コンセント・スイッチ類は高い位置に。1階と2階の電気系統を別にする。

​「Ⓒ:1階完全水没」

 ・空気だまりによる浮き上がり防止のために天井付近に空気抜き。

何か月も続く床下汚泥処理や乾燥、消毒、内装のやり替えの費用と不便、精神的にもつらいものがあります。建築時に対処すれば決して高い費用ではありません。

​耐水仕上げ材の提案(Blogで提案して行きます)

☆床、建具、階段等は水洗いでそのまま使用できます。

☆壁は木造ですので水の侵入は避けられません。壁板は一旦剥がす前提です。腰壁など水平方向のゾーニングによって修理を下部だけにとどめたりできます。

☆想定浸水が深い場合は天井は張らない(2階床の根太、梁を見せる)デザインをご検討ください。

既存住宅への応用

繰り返し浸水被害に会われ建て替え迄は出来ないがある程度事前に対策を行いたい場合は、「床下点検口+基礎内排水孔」が安価で有効な方法です。

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​​「ⓐ:0,5mまで」

「床下点検口」+「水抜き穴」で復旧を早く。

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​​「ⓑ:浸水床上まで」

​非吸水性の内装材で再利用。

​腰壁などの水平ゾーニング。

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​​「Ⓒ:3mまで」

​​天井近くの空気抜き穴考慮。

【仕上げ材料の提案】

​・復旧しやすい仕上げ材

​​・カビの発生を防ぐため、とにかく乾燥!

「継続使用可能床材」⇒タイル・石・テラゾ・樹脂塗床材・無垢フローリング

「張替え前提床材」⇒合板フローリング・Pタイル・クッションシート

「腰・壁仕上げ材」⇒水に強い杉や桧材・ケイカル板などを一旦外して再使用前提

         ビニールクロス・ペイントはやり替え

「床下断熱材」⇒発泡ポリスチレン(スタイロフォーム等)

「壁断熱材」⇒非吸水の硬質ウレタン吹付

「天井」⇒浸水3mは天井すれすれ。壁に準ずる材料を選ぶ。

「建具」⇒無垢材・アルミ製

​「階段」⇒無垢材・鋼製

​​「電気系統」⇒​1階の電気系統は分電盤で別系統に分ける。配線やコンセントは浸水高さ以上に。

​​参考

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​​「複数の床下点検口」

復旧時に床材を剥さないで洗浄、乾燥、消毒を行う。

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​「乾燥」

高圧洗浄機による洗浄、乾燥、消毒等の作業が続く。

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「水抜き穴」

床下の汚泥を高圧洗浄で洗う時の排水用。

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​​「水平ゾーニング」

軽微な床上浸水は必要な部分のみの修理にとどめる。

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​​「断熱材」

​硬質ウレタン吹付

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​​「継続使用可の床材」

水に強い無垢材・石・タイル・テラゾー・人研ぎ・塗床等。

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​​「再利用の置床タイプ」

​洗って再使用する置床タイプのカーペットタイル・クッションフロア等。

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​​「壁材」

​水に強い無垢材・ケイカル板等。洗浄の上で再使用するので取り外し易くする。ビニールクロスなどの仕上げ材はやり替え。

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​​「階段」

​復旧し易いスケルトンタイプ。木材使用時は水に強い無垢材。

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​「電気系統」

​1階の電気系統は分電盤(2F以上)で別系統に分ける。配線やコンセントは浸水高さ以上に。

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​​「ホームエレベーター」

2階の生活主空間への昇降の負担をなくす為に、ホームエレベーターは便利。

【現実的な一つの答え】

「国交省国土保全局2018年に発生した全国水害被害の暫定レポート」によりますと、この年床上浸水約2万棟・床下浸水約4万棟でした。

単純に1対2の割合で床下浸水が多かったことになります。

この床下浸水だけでもなければ3軒の内2軒は無傷で済みますので、下記2案を提案させて頂きます。

床上浸水宅については「準耐水害工法」により、比較的早期に生活を再開できるでしょう。

第1案⇒「耐水害住宅ⓐ-2」の基礎工法採用により0,5mまでの床下浸水は無し、それ以上の浸水には床上のみの復旧で対処します。

第2案⇒若干の高基礎(床高70㎝位)とし、0,5mまでは床下浸水はなし。それ以上の浸水は床下・床上共復旧が必要ですが、床下スペースが広いので作業は楽です。

費用的にも〔20㎝の基礎増加分+床下点検口+水抜き穴〕程度増で済みます。

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090-2409-9748

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